マイクロクレジット

 

マイクロクレジット

2006年のノーベル平和賞は、ムハマド・ユヌス氏という人が受賞しました。ノーベル平和賞は、文字通り世界平和のために貢献した人に送られる賞ですが、ユヌス氏はその世界平和に大きく貢献したとして、ユヌス氏が創設したグラミン銀行とともにノーベル平和賞を受賞しました。日本のニュースでも採り上げられたので、知っている人も多いと思います。

銀行がノーベル平和賞を受賞するとは少し奇妙な感じもしますが、グラミン銀行の行っていたマイクロクレジットが大きく評価されたのです。

 

マイクロクレジットとは

マイクロクレジットとは、小額のお金を融資する制度のことですが、通常と違い、ほとんど条件なくお金を融資することに特徴があります。普通、融資を受けようと思ったら、その金額が高額である場合は担保を求められるのが普通です。無担保で大丈夫なところでも、職に就いていなければ返済の当てがないとして融資してもらえません。

マイクロクレジットの場合は、無担保・無保証・無職であっても小額の融資をしてくれるという意味で画期的です。開発途上国の人々は、通常の融資方法であれば「融資して欲しい」→「収入の当てができてから申し込まなくては」→「でも収入の当てがない」→「融資してもらえない」となります。悪循環ですね。

どこかでこの悪循環を断ち切らなければいつまでも同じ状況が続くわけで、マイクロクレジットはこの悪循環を融資する側から断ち切ろうとしているわけです。

 

マイクロクレジットの導入

マイクロクレジットの導入に関して見ていくためには、マイクロクレジットの創始者であるユヌス氏の経歴を見ていくことが必要です。ユヌス氏はバングラデシュに生まれ、学生時代にはアメリカに留学し、経済学の博士号を取得してバングラデシュに戻ってきます。

バングラデシュは1950年以後、周辺のインドやパキスタンの関係などから非常に複雑な過程を辿り、1971年に独立したばかりの国です。バングラデシュの成立はインドとパキスタンの対立が発端となっているため、独立した後も国内状況は悪く、世界でもあまり例を見ないほどの貧しい国でした。勿論、世界中の先進国がODAを供給してきましたが、バングラデシュ国内の政治の腐敗がひどく、ODAがあっても一般に行き渡らず、貧しい状態から脱出できませんでした。

アメリカで経済学を勉強したユヌス氏は、「なぜバングラデシュはこんなに貧しいのか?」を自分で研究し、一般人が貧しいのは商売などをする元手がないからだとの結論に達し、自分のポケットマネーから小額のお金を個人に融資します。これがマイクロクレジットの原型です。

この時のお金が全額返ってきたことに自信を深めたユヌス氏は、いろいろな銀行に小額融資の依頼をするのですが、全ての銀行に断られます。それならば自分で銀行を作った方が話は早いとユヌス氏は考え、1983年にグラミン銀行を創設します。

といってもやっていることは個人でやっていた時とほとんど変わらず、貧しい人たちに小額の融資を行うというものです。結果、このユヌス氏のやり方は大成功し、バングラデシュの人々は貧困から立ち直ることができるようになりました。

 

マイクロクレジットの功績

マイクロクレジットの導入の経緯を見ればわかりますが、マイクロクレジットの最大の利点は、基本的に健康であれば誰でも小額融資を受けることができるという点です。例えば、収入を得るために商売をしたい、でも商売するための元手がないという状態であれば、貧困から脱出できないのも当然の話です。

ここで、商売するための元手が提供されれば、それによって大きな収益を上げることができるようになり、結果として生活向上に寄与します。マイクロクレジットはある意味全ての人間に経済的に同等のチャンスを与えるための制度といっていいのかもしれません。

 

マイクロクレジットの利用者はほとんどが女性

マイクロクレジットは、その利用者がほとんど女性です。特に、マイクロクレジットの本家本元であるバングラデシュでは、借主の97%が女性だとまで言われています。バングラデシュは宗教的な理由から男尊女卑であり、女性の社会進出が妨げられている環境にあります。しかし、貧困である以上、女性であっても家計を助けるために働かなければならないのです。

働き口がないため、自力で商売するくらいしか収入を得る方法はないのですが、それも元手があっての話です。マイクロクレジットはこのような人たちを救済するためのシステムとして行われていますから、女性の利用者が多いのはごく自然なことです。

 

マイクロクレジットの世界的広がり

マイクロクレジットは、始まった当初は失敗するだろうというのが大方の見方でした。我々から見てもすぐにわかりますが、無担保で誰でも小額融資を受けられるという話になれば、返済しないで借り逃げする人間が続出するだろうと推測できます。しかし、予想に反してマイクロクレジットは大成功を収めます。融資を受けた人間のほぼ全員が返済しているのです。

これはマイクロクレジット開始当初以来、現在に至るまで維持されています。このマイクロクレジットの成功を見た人々は、少しずつマイクロクレジットを導入していき、今現在では相当数のマイクロクレジットを行っている機関が存在しています。

1997年には3000近くもの代表団を一堂に集めたマイクロクレジット・サミットも開かれ、2005年は国際連合から国際マイクロクレジット年が宣言されました。世界的に正式に認知されたことにより、今後更なる拡大が予想されます。

 

日本とマイクロクレジット

このように、バングラデシュや、その他の開発途上国では目覚しい成果を上げているマイクロクレジットですが、日本では行われていません。日本の場合、社会保障制度が充実しており、どうやっても生活できないような人であっても最低限の救済ができるシステムが整っているからです。

マイクロクレジットに似たシステムはないわけではありませんが、無担保でよくても仕事してなきゃダメというのが普通ですから、マイクロクレジットと呼べるものではありません。仕事をしている人間に対してのみ融資しているはずなのに、毎年数多くの破産者が出ている日本の現状では、マイクロクレジット自体が導入されることはまずないといっていいでしょう。

ただし、マイクロクレジットの貢献度は最近日本のいろいろな機関で研究されており、マイクロクレジットのメカニズムを企業戦略に応用しようという考え方も出てきているようです。マイクロクレジットは始まってからまだ歴史が浅いこともあり、今後の展開次第ではどう転ぶかわかりませんが、日本国内でもマイクロクレジットに対する注目は集まっているようです。

 



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